もう一つのコーシッピパット作品:チェンライのランドマーク「時計塔」

前回記事で、チェンライにある寺院「ワットロンクン」(ホワイトテンプル)について紹介しました。この寺院をデザインしたチャルムチャイ・コーシッピパットは、チェンライ中心部のランドマーク「時計塔」もデザインしており、この地を旅行する方なら誰もが目にするはずです。
 
ちなみに、この時計塔、チェンライ第一バスターミナルから歩いて5分ほどの場所にある、まさにチェンライの中心に建ちます。時計塔の周りには居心地の良いカフェが何軒かあり、また裏手に回れば大きなローカルマーケット。時計塔から歩いて5分ほどの場所には、チェンライを代表する古刹「ワットプラケオ」や「ワットプラシン」があり、ツーリストにとって必ず通る場所だと言えます。
 

コーシッピパット氏と時計塔について少々解説

1955年生まれ、中華・ラーンナー系氏族の血縁をもつコーシッピパット氏は、シラパコーン大学でファインアートを学びました。その後、商業芸術に携わっていた時期もありましたが、1980年にスリランカを訪問、仏教芸術に開眼することになります。その後の活躍が「ワットロンクン」(ホワイトテンプル)に結実していると言えますね。
 
コーシッピパット氏がデザインした、チェンライの時計塔が建てられたは2008年のこと。黄金色に彩られ、とにかく派手!ワットロンクンの白い輝きを彷彿とさせますね。時計塔を昼に見学するのも良いですが、実は見ごろは夜のライトアップ時になります。毎時を告げる時報とともに何色にも変わる時計の姿は、インパクト大。
 

では、チェンライの時計塔をご覧ください

まずは、昼の姿から。黄金が日の光に照らされる姿は確かに目をひきます。また、ここから延びる道路には黄金の欄干が取り付けられています。
 
ただこれだけなら、わざわざ足を運んで見に来る価値があるかどうか・・・といった感じ?写真に撮る観光客もマバラです。しかし夜になると状況は一変!辺りは観光客に埋め尽くされます。

これは、一見すると通常のライトアップとさほど変わらない色合いですね。
 

ところが、音楽に合わせ時計塔が様々な色に変化していく。色が変わるたびに観光客は大はしゃぎです。
 
 
私の下手な写真で時計塔の美しさを表現できたかと言えば、かなりに不満が残りますが、ライトアップの光景の一端はお伝えできたのではと思います。では、コーシッピパット最大規模の芸術作品「ワットロンクン」をもう一度掲載します。時計塔のデザインとの相似性を堪能ください。

 
 

タイ現代美術の巨匠タワン・ダッチャニーによる創建「バーンダム」(黒い家)

チェンライは、タイ現代美術の巨匠タワン・ダッチャニーの故郷でもあり、彼の作品の集大成ともいえる「バーンダム」(黒い家)が見学できます。
 
この、ダッチャニーという人物の芸風をwikipediaから引用すると、彼は、現代人の奥に潜む狂気や退廃、暴力、エロス、死などを、独特の仏教観に根ざした独創的な画風により表現。黒を基調とし,獣や昆虫と合体したグロテスクでエロティックな人体と、聖者としての仏がからみあう迫力ある作風アジア独自の芸術表現を築きあげ、世界に衝撃を与えた画家の一人とのこと。
 
こうした文脈で「バーンダム」を見学すると、実に奥深い芸術作品であることが判ります。ちなみに私の個人的な印象で解説を加えると、バーンダムはどこか宗教的体裁が感じられますが、実際にはブードゥーなどの民間信仰・呪術をモチーフにしているのでしょう。タイではピー信仰に見られるようなアニミズム(精霊信仰)が広く浸透しており、こうした呪術などのモチーフが理解されやすいものと想像します。
 

バーンダムへの行き方

チェンライ中心街にある第一バスターミナルから、メーサイ方向へのバスに乗り込めば行けます。バスの案内人や車掌に「バーンダム」と連呼すれば、一番早く出発するバスに案内されるでしょう。チェンライから20分ほどでバーンダム最寄りの場所に着きます。帰りは、降ろされた場所の反対車線で、通るバスに手を振れば停まってくれるはず。
 

これが、怪しいバーンダムの姿です

到着すると早々に「黒い家」のお出迎え。かなり怪しい雰囲気がプンプンしています。

こちらの寺院建築は、ワットロンクンと同様、タイ寺院の伝統様式であるランナー様式を踏襲していますね。ただ、純白と漆黒の違いが際立ちます。
 

園内には、いろいろな建物が見られます。どれも伝統的な建造物の体裁をとっていますが、果たしてどの時代の、どの部族の建物がモチーフとなっているか、よく判りません。
 

先に紹介した寺院様式の大きな建物の内部。うん、はっきり言って怪しいです。無造作に置かれた動物の骨や怪しい彫像が、グロテスクを通り越して、ステキに思えてきます。
 

このグロテスクなオブジェは何を表しているのか。豚&臓器(胃腸)をデザインしているのでしょうか。
 

極めつけは”トイレ”です。様々な昆虫の死骸がぶら下がる異様な広い空間、ここで落ち着いて用をたしましょう。
 
 
いかがでしたか、チェンライを代表する2人の異形なデザイナーの作品。こうしたモダンなアート、私は大好きです。


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