これまでメーホンソンやタチレクで訪問した首長族(パドゥン族)の村を紹介しましたが、このメーサロンにもそうした村があると聞きつけ、さっそくバイクで向かいました。確かに、メーサロンはミャンマー国境からほど近い辺境の地、この地に居住していても何ら不思議はありませんが・・・ただ、観光客の方は他のエリアと比べると少ないと思われ、訪問客は私ただ1人だけでした。
 

「首長族」村の観光化について、私の意見を少々述べます

選ばれた女性たちが、首に金色の真鍮をはめる通称「首長族」、その特異な姿から、たびたび日本のテレビ番組などでも紹介されてきました。ただ、テレビでの取り上げられ方はいかにも好奇に満ちたもので、彼らの伝統文化に対する尊厳に欠けた内容であったことは否めません。国連難民高等弁務官事務所はタイの首長族観光が「人間動物園」だとし、ボイコットを呼びかけているとBBCが報道したことは、こうした傾向を裏付けるものだと思います。

しかし、私の意見としては、彼らの生活する村落を「人間動物園」と評価することも、非常に偏見に満ちた一方的な解釈だと思います。旅行者にとって特異な文化に触れたいという欲求があるため、「文化」を観光の目玉や収入源にすることには、とくに問題はないはずです。日本に来たら日本文化に触れたい、着物を着たい、舞妓さんや忍者と写真を撮りたい…といった要望があり、それを観光資源として旅行客を呼び込むことは当然のことですよね。それが、あまりにも異質な文化(例えばアフリカ・マリのドゴン族や、インドネシア・スラウェシ島の葬祭儀礼、ニューギニアの祭礼シンシンなど)であり、西洋人の視点からは(キリスト教文明とは真逆の)「悪魔」信仰のように見えても、それを止めさせる権利は持ちません。
 
ただ、「人権」は世界中の人々が共通にもつ価値観であり、人権侵害が認められる場合、それを止める義務があります。例えば、パドゥン族の人たちで、真鍮を首にはめることを拒否できなかったり、”強制”的に移住させられて他の地に住むことができない、村落内の土産物売り以外に働くことが認められない・・・など、人権を侵害する事由がある場合、私たちはそれを批判しなければいけません。
 

メーサロンの「首長族」村への行き方

メーサロン郊外にあるパドゥン族の方たちが集められた村は「ヤパー村」(Baan Yapa)と言います。ここまで行く公共交通機関は(おそらく)なく、バイクをチャーターする必要があります。自分でバイクを運転する場合、メーサロン周辺のガイドマップがもらえるので、それを見て行きましょう。とくに道に迷う個所はないと思いますが、途中、未舗装の箇所があるので、とにかく安全運転を心がけてください。ゆっくり走って1時間程度でしょうか、道中にはアカ族の村も点在しており、楽しいツーリングになります。
 

いよいよパドゥン族の村に入村します

いくつか村を通り過ぎていくうち、お土産屋が並ぶ一角が見えてくる。茅葺の休み処にバイクを停めました。
 

すると、案の定といったところでしょうか、お歯黒をびっしりつけたオバサンが近寄ってきました。おそらく彼女はアカ族の方でしょう。村への入り方を教えてくれます。
 

入村料は、当時200バーツ。まぁ、けっこうイイ金額ですよね。受付近くにいたお姉さんは普通の格好をしている。おそらく真鍮の首輪をつけることをしなかったパドゥン族の若者だと思われます。
 

ヤパ村の光景

私が見たパドゥン族の方の観光村はどこも1本道で、両脇に織物工房を兼ねたお土産屋が並んでいます。実は途中で雨が降ってきて、道が川のようになってしまいました。
 

こちらの村は、小さな子供たちが多いのが特徴かもしれません。
 

姉妹なのでしょう。2人とも、ミャンマーの化粧「タナカ」をつけていますね。
 

こちらの方たちは飾りを特に多くつけており、首が極端に長くなっています。
 

布を織る女性たちです。せっかくですから、どれを買うか見定めていましたが結局は決められませんでした。
 
メーサロン郊外にあるヤパー村は、自ら生計をたてる自立した村として成立しているものと思いたいです。ただどうしても、首輪をつけ首の長さを競うことに注目を集めてさせているように思えてしまい、これでは一部の人権団体からクレームが生じても致し方ない状況ではないでしょうか。首を長くした女性によるツーリスト向けの商売だけではなく、普段着の男性や私たちと同じ長さの首をもつ女性たちによる普段の生活実態も外から見えるような形にすれば、少なくとも”人間動物園”という誹りは逃れられるのではないでしょうか。


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