私のツイッターをご覧の方ならお気づきなのかもしれませんが、私は現在パートナーとその義母と共に生活を送っています。この義母は現在90歳代の半ばと大変な高齢なのですが頭がしっかりしており、もしかしたら私より計算などが早いかもしれません。ただ、年齢を重ねた分、足腰は弱り切ってしまい立って歩くことは困難な状況、普段は車椅子に乗り生活をしています。
 
私自身2017年末に海外からいったん日本に戻り、年が明けたら再びバンコクに向け出発をしようと考えていた矢先、義母の状態が悪くなり旅に出られる状況ではなくなりました。その後、身体の状態は持ち直したのですが、足腰の具合はもうどうにもならない。年齢を重ねれば重ねた分、具合は改善することはなく緩やかに悪化の一途を辿るのでしょうか。私も義母の状態が気がかりな上、パートナーを中心に義母の面倒を見ているため、とても一人や(パートナーと一緒に)二人で旅に出ようという気が起きないのが現状です。
 
さてこの義母、元々はかなりの社交家だったらしく、今もとにかく外に出ることが大好き。近場のレストランで食事をしようと持ち掛けたら大喜びで賛同します。そうした時、私も車椅子を押して街に繰り出すのですが、イイもんですよね。また、家に年がら年中いる義母はテレビをよく見ているのでしょう、とくに旅番組が好きなようです。すると、私たちに言われることは「旅に連れて行け」と言うこと。私とパートナーはずっと旅ばかりしていたのに義母はずっと家にいたことが、つい不満となり口に出てしまうこともあります。
 

東京での生活はまだ恵まれている、地方に出たら・・・

私は旅によく出る身で、日本の地方都市も以前はたびたび訪れていました。そこで気がつく点は、高齢者にとって東京などの大都市こそがいかに住みやすいかということです。東京などの大都市は平野部にあるため急坂などが少ない上に、歩道の段差も少ない。また、バリアフリーなどの意識が比較的高いため、高齢者が車椅子で入店できる飲食店もかなり多くあります。また、昨今は鉄道に乗ることも楽になりました。JRや地下鉄、大手私鉄では都市部の大部分の駅でバリアフリー対応がなされ、エレベーターを使い外からホームまで繋がる場所が多くなりました。また、駅員の方々も丁寧な応対が身についており、電車に乗り込む際は補助板を用意し手助けをしてくれるのは、ごく日常的な光景ですね。
 
しかしこれが地方となると・・・テレビ映像で映し出されがちな地方都市や過疎に悩む某農村を例にとるまでもないでしょう。地方こそ高齢者比率が都市部よりも高い割に、バリアフリーに対する意識はどこかに飛んでしまっている。街中心部はシャッター商店街になってしまい、買物をするには郊外の大型ショッピングセンターまでクルマで行かなければいけない。ただ、街中心街でさえ段差がひどい上に、歩道の状態も悪い。しかも公共交通機関は鉄道・バス共に縮小の一途。ただでさえ、高齢者の危険運転が日頃話題になる中で、高齢者が自ら運転せざるを得ない環境をつくっています。
 

高齢者の生きがいとは何か・・・食欲と刺激でしょう!

年齢を重ね足腰の自由がきかなくなった方たち、確かにその先の人生は短いのかもしれませんが、だからこそ、残された時間を悔いなく生きがいを持って暮らしてもらいたいのです。さて義母と接して彼女が何を望んでいるのかと言うと、これは食べ物と刺激だと思います。とにかく好きなものを美味しく食べたい、まだ知らない景色や体験を通して刺激を受けたいという欲求が人一倍強いのに、自分一人ではできないことがモドカシイのではないかと思います。
 
そう、車椅子の生活になってしまうと、自分一人では外出することもできず、オイシイ食事を自分で作ることも難しくなります。これって健常者の目から見てもカワイソウですよね。
 

まずは外食産業にモノ申したい!高齢者が入りたい店ほど実は入りにくい

私の義母にとってオイシイものを食べたいという欲求が一番先頭に立つものと思い、私も車椅子を押していろいろな店に行くのですが、義母の顔が心の底から晴れやかになるのは少ない気がする。その理由を述べるにあたって、高齢者が好きな食べ物について私なりに分析すると・・・。彼ら彼女らの多くが保守的な嗜好だと思います。しかも身体の各器官と同様に味覚も衰えていることで、濃い味付けを好むようになる。また歯が弱くなっていることで、柔らかいものや咬まずに飲みこめるものが好き。
 
こうした私の独断的な分析による傾向を踏まえて高齢者が好きな食事をざっくりと言えば、次のようなメニューになります。

  • うなぎ、寿司、刺身…などの高級和食、醤油たっぷりの煮魚・焼魚、濃い味でドロドロの煮物
  • ウニやイクラなどの魚卵、柔らかい牛肉を使ったしゃぶしゃぶ・すき焼き
  • 濃い味で具が煮込まれたカレーやクリームシチュー、スープ

といった感じでしょうか。保守的な嗜好のため、全般に和食や昔からある洋食が好きなようです。間違ってもスパイスで刺激が強いエスニック料理は無理ですね。
 
さて、こうした和食店(とくに高級店)、バリアフリーに対応しているかと言えば、答えはNOでしょう。割烹など、入店時に女将が迎えてくれる店は玄関でもう駄目な場所が多い。うなぎ屋は、テーブルが少なく、畳に座らされる店が多い。寿司屋はナニあの高いカウンターは、あれじゃ車椅子から降りて席に座れないよと文句をつけたくなります。
 
お気づきのことと思いますが、和食割烹やうなぎ屋、寿司屋は高齢者がメインユーザーであることが多い店・・・しかし、そうした人たちには身体的な理由で敷居が高い店になってしまう。
 
そうなると手軽に入れる店はファミレスと言うことになります。最近では和食ファミレスも多いので、問題は少ないと思われますが・・・。高齢者って意外とわがままなのですよ。テレビで放映され食欲をそそるのは高級店、ファミレスが紹介されるときは”全メニューを食い尽くせ”などの企画、これって若者には魅力的かもしれませんが高齢者にとっては拷問です。そんな紹介のされ方では、ファミレスを高齢者に訴求するどころか、ネガティブなイメージしか残らない。結果としてファミレスに連れて行くと、どこか浮かない顔をされてしまうのです。
 

これよりさらにヒドイのは旅の環境:(高級)旅館や料理自慢の民宿、それに観光バス

食事事情よりさらにヒドイのは旅行環境でしょう。例えばバリアフリー対応の(高級)旅館・・・けっこう少ないですよ。もともと和風建築は段差がつきもの、玄関では数段上がった場所で女将が出迎えてくれますもんね。しかも足腰の悪い者にとって畳生活がどれほどの負担になってきたか・・・昔の日本人はよく我慢したものです。高級旅館でさえそうなのですから、大部分の民宿なんて(車椅子の)高齢者を始めから拒否しているようなものです。
 
でしたら、シティホテルやビジネスホテルに滞在すれば良いのです・・・確かにそうですが・・・ちなみに私はビジネスホテルが大好き、一生ビジホでもOKなのですが・・・保守的な志向性が強いと思われる高齢者にとっては、そうはいきません。大体にして、高級旅館ってメインユーザーは高齢者じゃないの?
 
観光バス、あれもヒドイ!ハイデッキのため、乗り込むのに一苦労の高齢者って多いのではないでしょうか。しかも、バリアフリー対応の観光バス・・・ほとんど存在しません。
 

高齢者に優しい社会を目指すには、まず古くからある伝統的なレジャーから変わるべき

車椅子の高齢者にとって大変厳しいものをもう一度申しますと・・・割烹、うなぎ屋、寿司屋、高級旅館、民宿、観光バス…を挙げましたね。これらのもの、観光バスを除いていずれも和のテイスト・レジャーとしてこれまで訴求されてきたもの、しかもクールジャパンとして外国人に対してもアピールしているものですよね。バリアフリー社会を目指すにあたって、まずは足元にある和のモノから改善してみてはいかがでしょうか。


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