フエに到着して早々自転車で街の探索を始めるが、観光では肝心の王宮(グエン朝王宮)や歴代皇帝の陵墓などにはなかなか足が向かない。だってここはベトナム、街角のカフェでゆったり過ごし、腹が減ったら市場飯や小さな食堂で見慣れもしない料理をオーダーするだけで楽しい日々が過ごせます。そして夜はビアホイ(屋台の生ビール)で乾杯すれば、有意義な1日に満足しながら夢うつつの状態・・・。

とても古い写真ですが2003年の正月にベトナムをプライベートで初めて訪れた際の1コマ(ホーチミン近郊)。当時は大都市を除き日本人旅行者がまだ珍しかった時代、路上の鍋屋台(ヤギ鍋)に顔を出せば、どこからか酒を勧める手がスッと伸びてきたと思ういなや、気がつくと大きなグループの輪に取り込まれてしまっている。お互い言葉は通じないが何か陽気で楽しい時間をおくり、そろそろと腰を上げ精算を頼むと誰かしらがすでに支払っており僕からはお金をとってくれない。
 
私にとってのベトナムの旅って終始こんなもの、昼はウダウダ、夜はグダグダ過ごすのがお約束。だいたいねぇホーチミンシティやハノイの街なかで気張って観光をする場所などなく、気が向いたらカントーやハロン湾など郊外にある魅力的なスポットへ出かければいいのです。
 
ただフエやホイアンではそうはいかない。何と言っても街なかが世界文化遺産に指定され、それを目当てに世界中からツーリストを集めているのです。初めてフエに来て王宮に行かないのならば、初めてシェムリアップに来てアンコールワットに行かないのと一緒、おそらく変人扱いされることでしょう。う~ん、気乗りしないがここは重い腰を上げて、フエ王宮を歩いて巡りたいと思います。
 

チューンティエン橋を渡り王宮ゾーンのある旧市街に入る

フエで最も格式があるホテル「サイゴンモリンホテル」の向かいに架かる橋、それがチューンティエン橋…

この風格ある鉄橋は1897年の架橋、このブログを書くにあたり図書館で借りた『地球の歩き方』によると、設計はパリ・エッフェル塔で有名なギュスターブ・エッフェルと言われる由緒ある橋とのこと。
 

さぞかしフランスの香りが漂う高貴な橋と思いきや、渡橋の光景はまさにベトナム。天秤棒を担いだ方が多いのは、橋を渡った先にフエ最大の市場「ドンバ市場」があるからです。
 

活気あふれるドンバ市場で食事といきたいところだが、この日はすでにフエ名物ブンボーフエ(麺)を食べたばかり。妙にボリューミーかつ濃厚なスープに腹は打ちのめされた状態で食事はもうイイ!フルーツ屋さんで熟しきったマンゴーを切り分けてもらいました。
 

王宮ゾーンに入るには門をくぐる必要がある。上の写真はガン門とよばれる王宮正門に一番近い門。この門の脇にとにかく巨大なベトナム国旗がたなびくフラッグタワーがある。この国旗掲揚台、台座だけでも高さ17.4m、塔の先端までいれると29.5mもあるとのこと。かなり離れた場所から撮らないと1枚の写真に収まりません。
 

フエ王宮をせっかく散策したので、ざっくり紹介します

フエ王宮の中に入るには入場料が15万ドンとヒエ~と驚きの雄叫びをあげたくなるバカでかい金額!というほど高くはありません。現在のレートで言えば700円ほど、ベトナムの屋台食と比べれば高いがまぁ許容できる金額が請求される。しかし、15万という数字は、ベトナム通貨ドンに親しんでいない者にとっては Too expensiveだね。
 

こんな話しから始めるのは、実は最初、市場から一番近い顕仁門から入ってしまったから。この門は裏口(出口)にあたる門でスンナリ入場してしまったが、どこで入場券を買うかが判らない。しばらくウロウロするもラチがあかず門番のオバサンに尋ねると、アラァ~マァ~と驚かれてしまうと共に、あなた正直者ねぇという視線を向けられる。まあ、そのまま無銭で入場してしまう人もいるのでしょう。ただねぇ15万ドンと数字だけはでかいが実際は700円程度の金額で、後々面倒なことになるのは避けたい。チケットを買い求めるため、表門にあたる午門(王宮門)の場所を教えてもらったのでした。
 

正規に料金を支払ったので威風堂々と見学を開始します。こちらは太和殿(タイホア殿)、時の皇帝ザーロン帝による創建。北京紫禁城の太和殿を模して造られたと『地球の歩き方』の解説を転記。さほど興味は持てず、次に進む→→
 

こちらは右廟(ヒューブー)という何ということはナイ建物のようだが、けっこう面白かったのは、こちらではコスプレ写真が撮れること。中華風のコスプレを嬉々として撮る方々がとても微笑ましかったです。
 
しかし王宮はさすがに、とにかく広い。東西約642m、南北約568mの敷地を隅々まで歩くとおそらく1日仕事になるかもしれません。ガイドブックに解説付きで掲載されているような建物はツーリストも多く少々興ざめの雰囲気の中での見学となるが、それも太和殿など一部のエリアに限られる。
 

例えば奉先殿に向かう道には人の気配がほとんどなく、静かな王宮敷地内の散策が楽しめます。するといかにも自分好みの、今にも朽ち果てそうな門を発見。門の名前は読み取れなかったが、門壁の至るところに漢詩が書かれており、余裕があれば読み解きたい気分。
 

こちらの門は應祥門とハッキリと読める。鳳凰や龍など、いかにも縁起の良さそうな(想像上の)動物たちが彫られ、とても美しい門です。しかも門をくぐると手入れが行き届いた中庭があり、興廟・世祖廟・顕臨閣の3つの建物が並んでいて壮観。
 

世祖廟と顕臨閣を並べてみました。世祖廟はグエン朝の菩提寺で歴代皇帝のうち10人の皇帝の位牌が祀られており、大変厳かな空気に包まれた場所。女性向けガイドブックで、例えば〇〇に効果があるパワースポットなんぞコピーをつけて紹介をされなくて良かった。とにかく人の気配に邪魔されずに凛とした空気感を楽しみたい場所です。
 
お気に入りの場所を見つけ出したことだし、気分良く見学を終えることができました。再び顕仁門に赴き堂々と退出、入場料15万ドンの価値は十分にあったと自分を納得させながら帰路につきます。
 

王宮ゾーン最大の見どころは、もしかしたら歴史革命博物館かもしれない

実は出口のすぐそばにはフエ宮廷骨董博物館と歴史革命博物館という2つの博物館があり、とても興味深い展示物に思わずうなってしまう。そのうち、歴史革命博物館の展示物を紹介すると・・・

どうですか、ベトナム戦争で活躍したロシア製戦闘機に米軍戦車の数々・・・私はミリタリー関係には全く造詣がないが近現代史は大好き。革命の勝利者たるベトナム側の視点を中心に語られることがかえって興味をそそります。王朝史と現代史が混在し不思議なコントラストを織りなすフエ王宮ゾーン、ただモノではないです。


<スポンサーリンク>