ティエンム寺やホンチェン殿などフエ郊外の寺院を巡り終え、この時点のツアー途中経過に個人的な採点をつけると、う~ん65点=可も不可もなくといった評価かな。やはり雨が降ってしまうと気ままに野外を散策する楽しみが奪われてしまうため、得点はどうしても厳しめです。
 
ツアー後半は、グエン朝の主だった皇帝たちが眠る陵墓(帝陵)巡り、ミンマン帝陵・カイディン帝陵・トゥドゥック帝陵の3陵墓を探索します。ミンマン帝陵に着く頃にはどうにか雨は止み、絶好の見学日和(大げさ!)となる。私の採点も大幅に改善し、高得点連発の帝陵探索となるのでしょうか。
 

雨に濡れながらも美しく映えるミンマン帝陵、私の記憶には乏しく残る(;´д`)

1840年から3年間かけて建立された、中国風の構成を持つミンマン帝陵。再び『地球の歩き方』の解説を引用すると「ほかの陵墓と比べ最も威厳のある造りで、その調和性と手の込んだ装飾には目を見張る」との記載、これを読めば誰でも期待するぜ!ただ私が訪れた時点は”歩き方”を持っていなかったので、こうした記載に目を通すことはなかったのですが、最初に結論の感想を申すと・・・過大な期待はしない方がイイよ!
 

ボートを降り雨で濡れた石畳を歩くと趣のある古びた門(左紅門)が登場、ワクワク探検タイムの始まりです。
 

門をくぐると、そこには数々の石像が私を出迎えてくれる。任官登用試験に合格した官僚の姿に加え、ゾウやウマの姿が目立つ。帝の霊魂を鎮めるであろう石像の姿は、まるで兵馬俑のようではないですか?ちなみに私が秦始皇帝陵を訪れたのは遠い昔、大学生の頃。当時の記憶は……ほとんどありません、カナシイ!
 

私たち一行に同行するガイドさんは、門や建物に立ち寄るたびに詳しい説明をする。判りやすい英語でヨロシイのですが、ベトナム王朝史に関し予備知識を持たない私にとっては、全く興味が持てない内容……ってアンタ、なぜここに来たのってツッコミが入りそうで恐怖。
 

私にとって興味深いのは細かに細工された彫像だが、ガイド氏はそうしたものに解説を一切加えず、一通りの説明が終わると先に進んでしまう。質問タイムくらい設けてほしいね。
 

こちらは皇帝と皇后の位牌がある崇恩殿。黄金色の華麗な祭壇が目を引き、ガイドの長々とした説明が入るが私はパス、とっとと先に進む。
 

ミンマン陵はこの明楼とその先の墳墓で終点に至る。見学しながらゆっくり歩き、往きは20分程度の行程。いや~素晴らしかったとガイド氏に感想を述べるが、それってグルメ番組のリポーターが、どんな料理にもとりあえず”オイシイ~”と感想を述べた後、取って付けたように”鮮度の良さに加え、ほのかに漂う上品な香り”などと(心にもない)コメントを寄せるのと同じレベルです。どんな観光スポットも、ガイドブック程度でよいので予備知識を仕入れてからの方が楽しめますよ。
 

カイディン帝陵、私にとって最も記憶に残るスバラシイ陵墓

ミンマン帝陵からはマイクロバスに乗換え、次の目的地カイディン帝陵に向かう。再び『地球の歩き方』の解説を記すと「1920年から1931年まで11年かけて造られた西洋風の建築で、芸術的にも優れた陵は、他の陵とは異なった趣きがある」とのこと。今度こそ期待が持てるじゃないですか……実際に期待通りの素晴らしい帝陵でした。

バスを降り門をくぐると数々の石像が出迎えてくれる点はミンマン陵と同じだが、この門は古色蒼然とした中華風の門ではなく、西洋の意匠を採り入れたもの。越洋折衷の様式が新鮮で、ショッパナからインパクト大。
 

オリエント趣味が甚だしい西洋の庭園を歩くような雰囲気に浸る。本殿の啓成殿に向かいます。
 

ヨーロッパの宮殿を思わせる内観ながら、壁の装飾や調度品をよく見ると完全に東洋の意匠。見事です!
 

奥には祭壇が安置された部屋が隠れたようにあり、黄金色の怪しげな輝きを放つ。ラデン細工や中華&和風のステンドグラスに埋め尽くされた部屋は豪華の一言。2枚目の写真奥には金箔に彩られたカイディン帝の像が顔を出す。
 
ここに来てフエのイメージが一新されました。中華王朝を真似て造られた都城はどこまで行っても中華風装飾に包まれた中華の街、まるでミニ北京/西安といった感想しか持てなかったが、20世紀初めに花開いたベトナム+西洋の融合建築が個性的で印象に残る。人によっては趣味が悪いといった感想を持つかもしれないが、私にとってはこの毒々しさこそ素晴らしく映る。強烈なインパクトを放つカイディン帝陵、バンザイ\(^o^)/。
 

帰り際にもう一度カイディン陵を振り返ってみる。遠目に建物だけを見ると柱の形状などから、ここは西洋?なんて思うかもしれないが、近くに寄ると屋根には龍が踊り跳ね、漢字の刻印がある完全に東洋の意匠。摩訶不思議な建物は、まるで中国の怪奇建築群が集まる開平の街を想起しました。
 

トゥドゥック帝陵:古楽器の演奏に心癒される

カイディン陵に感心し、ツアー自体にも十二分に満足した私。もうここでフエ市内に戻っても構わないと思っていたが、ツアーはまだまだ続くのです。
 
最後の観光スポット、トゥドゥック陵の手前には手製線香の制作工房があり、まずはこちらの見学から始まります。

色トリドリのステキな線香……あまり関心が持てず、すぐそばにある帝陵に向かう。
 

個人的にあまり関心が持てなかった場所については、すぐに『地球の歩き方』の解説を頼ってしまう。「1864年から3年間を費やして造られた帝陵で、広々とした別荘風の造りが絵画的な美しさを生み出している」とのこと。ハイ、そうですね。広い蓮池が珍しく、とかく暑いベトナムの方にとって涼を取るのに打ってつけだとしても、中華庭園や日本庭園を見慣れた私にとってはよく馴染んだ光景。先ほどのカイディン陵と比べ、インパクトに乏しい(これ、個人的な感想です)。しかも再び雨が降り出したため、雨宿りの場所を探し出すと・・・
 

池のほとりの宮殿から古色ゆかしき音色が聞こえてきました。地元有志の方々による古楽器の演奏は、プロが奏でる統一感のある音色とは異なりややバラケているが、それがちょうど良い味となり印象に残る演奏。少し聞いたら立ち去ろうと始めは思っていたが、雨音との和音を奏でる演奏にいつしかウトウトとしてくる。ふと気がつくと、もうすぐバスの出発時間、正直申すとトゥドゥック陵の見学はほとんどせずにツアー一行のひと山に戻ったのでした。


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