前回記事に引き続きダークツーリズムを主眼に置いた観光スポット、今回は朝鮮半島分断の象徴として世界の注目を常に集める地「板門店」を取り上げます。皆さまご存知の板門店を今さらではあるが、まずはその歴史を手短かに紹介。
 
第二次世界大戦において日本が敗北した結果、朝鮮半島では1948年に韓国(大韓民国)と北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の南北2国家が成立するが、1950年に突如、北朝鮮が韓国に侵攻し朝鮮戦争が勃発。ただ時間が経過するにつれ、国連軍vs中国義勇軍=米中代理戦争の様相を示しながら戦線は膠着状態に、1953年に南北間の休戦協定が締結される。その結果、板門店を含む軍事境界線が敷かれ、朝鮮半島に存する南北2国家は現在に至るまで分断状態が固定化されました。
 
韓国と北朝鮮の南北2国家を分断する軍事境界線は東西で約248kmの長さがあるが、なぜそのうち板門店が注目されるかと言えば、ここに南北2国家と国連軍を含む共同警備区域(JSA)があり、軍事停戦委員会本会議場(南側)や中立国監督委員会(北側)が置かれているからです。南北2国家を交えた会談は板門店にある南北側の施設で行われることが通例となり、ニュースでも度々取り上げられる機会が多いことは言うまでもありません。
 

ダークツーリズム的視点から見た板門店の見どころを紹介

板門店の「見どころ」といっても『地球の歩き方』などのガイドブックにそうそう詳しい見どころ情報は掲載されず、事前の先入観では「あの南北会談/米朝会談が行われた場所(平和の家/自由の家)」や「軍事停戦委員会本会議場」しか思いつかないでしょうか。しかしねぇ、このブログ記事のテーマは”ダーク”、実際の戦闘や事件の現場でなければインパクトが弱い!そこで板門店ツアーでぜひとも見るべき、ダークスポットを紹介します。
 
ちなみに私が板門店を訪れたのは2008年1月と実に古い!となりますが、数々の政治的舞台となった割には観光を取り巻く状況はこの10数年間での変化はとても小さいのです。ヨカッタぜ!
 

板門店を代表するダークスポット3選

自由の村(台城洞)

    板門店にある軍事境界線から500m韓国寄りにある、恐ろしいほど不自由な村。民間人が居住するが共同警備区域内に所在するため、住民の行動には多くの制約が課されている。区域外に自由に外出することはできないばかりか、例えば村内の女性が村外の男性と結婚したら居住資格が失われたり、日常生活における多くの行動は事前に軍に報告しなければいけない等々。「自由の村」というネーミングに思わず失笑。
     
    ちなみに私が訪れた自由の村に人の気配は全くなく、ただ小綺麗で見た目は居心地の良さそうな家が立ち並ぶ光景はかえって陰惨なモノ。この狭く寒々しいエリアにずっと閉じ込められていることを想像すると……まさにダーク!

 
帰らざる橋

    朝鮮戦争停戦後に捕虜交換が行われた橋で、ここを渡ると2度と祖国に戻ることができない怖~い橋です。1976年には橋のそばにあるポプラ並木の剪定作業にまつわり、米韓vs北朝鮮間の戦闘が行われ死傷者が発生した。このポプラ、実は金日成主席が自ら植えたものとされ、北朝鮮にとって切られてしまうことは何よりの屈辱だったらしい。
     
    私たちが乗るバスは、この「帰らざる橋」が見える場所でわざわざ停車するが、バスから降りることは当然に厳禁。乗客は隠し撮りのようにコッソリ撮影します。不毛の荒野の中に現れる1本の道、視界のすぐ先まさに手の届く場所が北朝鮮管理区域となり、戦闘すらも行われた場所・・・なぜか背筋に悪寒が走りました。

 
自由の橋

    板門店に向かう手前、臨津閣にかかる橋。現在、臨津閣に向かうには特別な入域許可は必要なく周辺は観光スポットとして整備されたため、ソウル観光のついでに立ち寄る観光客が目立ちます。自由の橋は、北朝鮮で捕虜にされた韓国民がこの橋を渡り戻ってきたことから命名されました。橋の周囲には多くの短冊が吊り下げられ壮観です。
    この辺りではすでに有刺鉄線があちらこちらに張めぐされており、ソウル市近郊であるにもかかわらず周囲には無人の荒野が広がるのが見える。また、この臨津閣に到着する手前には「肉弾十勇士」など朝鮮戦争で戦った兵士たちを祀る巨大な碑がいくつかあるが、私は興味がないためスルー。

 

国連軍のガイドと共に巡る板門店

板門店のあるJSA(共同警備区域)内は基本的に国連軍ガイドが同行するツアーでまわることしかできません。このうち観光的に目玉となるスポットは、やはり軍事停戦委員会本会議場でしょうか。

板門店の中心にあるこの本会議場の中に軍事境界線が通っており、テーブルの中央になにげなく置かれたマイクこそ韓国・北朝鮮の境を示す印。会議場の内部だけは両国間の行き来が可能なため、私も一応は北朝鮮に入国済み!
 

本会議場の周囲には韓国・北朝鮮の施設が建てられており、1枚目は韓国側施設「平和の家」、2枚目は北朝鮮側施設「板門閣」。国境マニア垂涎モノですね。
 

荒野が広がる大地の向こうに北朝鮮が広がっており、巨大な北朝鮮国旗が怪しくはためく。この展望台では国連軍兵士と一緒にバシバシ記念撮影をとったが、微妙な写真かもしれず公開は控えます。
 

板門店に行くためには、現地でツアーに申し込む必要がある!

板門店は軍事境界線上にあり一般人の入域が制限された場所のため、ツアーへの参加が必須となります。こうした情報は事前に『地球の歩き方』などのガイドブックをあたるのがベターで、以下『歩き方』から引用したソウル市内の板門店ツアーを実施する会社を掲載します。平時なら前日までにツアー参加申請を行えば、とくに問題はないと思います・・・!?

・板門店トラベルセンター:www.koreadmztour.com
・国際文化サービスクラブ:www.tourdmz.com
・大韓旅行社(KTB):www.go2korea.co.kr
・中央高速観光:www.jsatour.com



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私のこのブログは「旅ブログ」のため、政治的な記述はなるべく避けていますが・・・実は私、アジアを取り巻く国際政治には並々ならぬ関心を持っており、朝鮮半島情勢にも興味津々!2018~19年にかけての南北情勢の刻々と変化を遂げるニュースには、ワイドショーネタを含め毎日食らいついてチェックしていました。一時は南北和解を予感させ、板門店が「ダークツーリズムの象徴」から「平和の象徴」へと変貌を遂げるのかと期待していたが、今(2020年3月)はそれどころじゃない!板門店の存在など、どこかへ飛んで行ってしまいましたね。