*この記事は、2012年4月に訪問したバンテアイスレイとバンテアイサムレに関する記事です。
 
シェムリアップに滞在してアンコールワットやバイヨン、タプロームなどのアンコール遺跡群を見学するうちに、いかに美しいレリーフやデヴァター(彫像)に触れたとしても特別な感慨が湧き起こりにくくなってくる方って実は多いのでは。そう、いかに素晴らしく美しい遺跡であっても、1日に何ヶ所も見たり、何日も連続で訪れているうちに、自分の美的感性はどんどん麻痺してくるものです。「あ~どこの遺跡も一緒だね」などと”ほざく”バックパッカー、うん、京都を訪れた(寺院に大した興味がない)方がもう寺院見学には飽きちゃったよというのと同じですね。
 
しかし、遺跡や寺院見学にたとえ飽きていたとしても、そんな方の目を覚ます素晴らしい遺跡、それこそがバンテアイ・スレイだと思うのです。あの精微で美しいレリーフの数々やデヴァターは他の寺院とは一線を画すものとして、圧倒的な存在感をもって眼前に迫りくる、まさに「アンコール美術の至宝」と呼ぶに相応しいもの。アンコール遺跡群のうちでも必見の場所です。

 

バンテアイ・スレイへの道

バンテアイ・スレイまでの行き方や道中の見どころを紹介します。

バンテアイ・スレイへの行き方

バンテアイ・スレイまではシェムリアップ市街地から道路番号67号線を北東に約35km、車やトゥクトゥクで1時間弱の道のりです。シェムリアップからアンロンベンやスレアム方向に向かう公共バス(ワゴン車が多い)で近くまで行くことは確かに可能です。しかしローカルバスの発着場所は時折変わり、どこから出発するのか現地で情報を得なければならず、またワゴン車による公共バスは人が集まってから出発することが多いので時間も読めません。
 
旅行者としてバンテアイ・スレイを訪問するならば、やはりトゥクトゥクをチャーターしたり、他の旅行者と一緒にツアーを組むのがベターだと思います。ちなみにトゥクトゥクをチャーターした場合、値段の相場は1台当たり20ドル程度。1日チャーターですので、道中にあるアンコールワットやアンコールトムなど他のアンコール遺跡群と一緒に回っても同じ値段です。複数の人でチャーターをすれば1人当たり10ドルを切りますね。
 

バンテアイ・サムレ(Banteay Samre)

道路67号線を北上する途中、少々横道にそれるとバンテアイサムレという寺院遺跡に到着します。東バライの外側に位置しますが、アンコールトムからは少々道が外れてしまうため、バンテアイスレイと一緒に見学すると良いと思います。
 

トゥクトゥクを降り少々長いラテライトの参道を歩くと、正門が見えてきます。
 

12世紀中頃にスーリヤヴァルマン2世の治世期に造られたヒンドゥー教寺院で、アンコールワットの様式を踏襲したものと言われています。小アンコールワットとも言われているらしいですが・・・規模は小さいですよ。
 

アンコールワットでも見られる窓枠の造形ですね。大蛇ナーガもお出ましです。
 

ただ、バンテアイサムレのは規模がさほど大きくないため、見学時間は20分ほどで済んでしまいました。この時の私は、遺跡見学に飽きてきたバックパッカーとほぼ同じ心理状態です。参道には大きなアリ塚が!こうしたものが面白く感じられてしまう。遺跡警備スタッフのお子さんでしょうか、足にしがみついていてカワイイ!
 

バンテアイ・スレイ(Banteay Srei)

バンテアイサムレを見学した後、途中の民家(トゥクトゥクドライバー知り合いのお宅)にお邪魔するなど寄り道をしながら、バンテアイスレイに向かいます。
 

トゥクトゥクを降りると田園地帯が広がる景色。しばらく歩くとバンテアイスレイ入口の門に到着です。
 

リンガの並ぶ参道をしばらく歩きます。バライ(池)もありますね。
 

寺院中央に入る楼門に到着しました。素晴らしいレリーフが残されていました。ここでバンテアイスレイの歴史について少々解説。967年、ラージェンドラヴァルマン王の下で寺院建設が始まり、息子のジャヤーヴァルマン5世のときに完成しました。その後、アンコール朝の衰退に伴いこの寺院も放棄されたが、時は流れ1914年に再発見されることになります。この寺院を有名にしたのは、著名なフランス人アンドレ・マルローがデヴァター像を盗み出して逮捕されたことです。彼の心をかき乱すほど、このデヴァターは美しかったのでしょう。
 
ここからは美しいバンテアイスレイのレリーフやデヴァターをご覧ください。

どうですか、これほど素晴らしいレリーフが残る寺院を、私は他に知りません。このバンテアイスレイを見ずにして、アンコールの遺跡群を語ることは・・・私ならしません。


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