スマトラ島ブラスタギ近郊には先住民族カロ・バタッ人が住む、かなり特異な集落がいくつかあり、公共バスで容易にアクセスすることができます。私は、ブラスタギから日帰りでリンガとドカンという小さな集落を巡りましたが、いずれの村にもカロ・バタッ人がつくり上げた特徴的な伝統家屋が残り、とても見応えがありました。しかも観光客が訪れることが少ないためか、珍客の訪問に村の子供たちはずっと付きっきり、とても楽しい旅となりました。

 

まず最初にカバンジャヘへ向かう

スマトラ島ではブキティンギやトバ湖(トゥットゥッ)、そして今回のブラスタギを巡ったが、この3つの街は私の長い東南アジア旅行の中でも好きな街上位(Top10)にランキングしたい街、桃源郷のような場所です。さらにブラスタギから奥地の村落に向かうのですから、これは桃源郷のさらに奥、もう期待に胸はバクハツ状態です(!?)。
 
さて今回の目的地、リンガやドカンに向かうためには、まず中継となる街カバンジャヘ(Kabanjahe)へ行く必要があります。ここまでは、ブラスタギのマーケット前にあるバスターミナルからベモに乗り込み約30分、料金は最新の『地球の歩き方』によるとRp5000(約40円)で行くことができます。

こちらの写真は、カバンジャヘ市内を走るベモ。この辺りを走るベモは軽トラに幌をつけたものが主流です。
 

カバンジャヘのマーケットを散策、核心の光景はネットにアップできません

カバンジャヘに着くと、まず目につくのはローカルマーケット。マーケット入口の建物は、ブラスタギと同様、伝統的な意匠が目を引くつくり。この時点で期待がバクバクです。
 

中に入るとまず鶏たちがお出迎え。鶏たちはけっこう静かでして、堂々とした立ち居振る舞いで客の視線を集めようとしています。ここまでは写真で公開できますが・・・私は見てしまった、買われていった鶏のその後の運命を。これまでも鶏市場はいろいろな場所で見てきており、鶏はいったん購入されると生きたまま繋がれ持って帰られるものだと思っていましたが、ここで私が見たのは年長組くらいの子供を連れたお母さん。子供って無邪気な顔をしながら、何の悪意もなしに残酷な行動をやってのけるのです(生きている鶏の首を笑顔で引っこ抜く、胸を押し潰す仕草をする等)。衝撃的な光景の後、お母さんは子供を叱るような行動をとくに見せなかったのも意外でした。
 

野菜市場に魚市場。赤い、金魚が巨大化したような魚はブラスタギでも売られていました。この辺りの特産なのでしょうか。
 

カロ・バタッ人の伝統集落、リンガとドカンに向かう

伝統集落リンガとドカンはカバンジャヘを起点にアクセス可能、いずれもベモで15~30分ほどの場所となります。ただ、ベモの本数は1~2時間に1本程度となるので、その点は注意が必要ですね。
 

1.リンガ

ブラスタギやカバンジャヘは田舎風情は抜けませんが、とにかく街でした。ところが、ベモに乗りたどり着いたリンガの村は、ひたすら素朴。上記の写真はバスが到着した場所。とりあえず広場になっており、周りには伝統家屋が立ち並んでいることがお判りでしょうか。ここで、カロ・バタッ人の伝統家屋について説明を加えると、「牛のようにとがった屋根と彫刻が施された柱で飾られている」点が特徴的とのこと。では、そうした伝統家屋を探しに行ってみます
 

これがリンガの伝統家屋、首長の家でしょうか

リンガの村落には伝統的な装飾が周囲に施された家屋が数軒残っています。この藁(?)で葺いた屋根は、日本の伝統家屋を想起させて、私を遠い過去の懐かしい情景に誘う・・・わけがありません!さすが南国的な意匠は日本とは全く異質ですね。
 

壁をアップで見てみましょう。この赤と白のツートンで彩られたゲジゲジ(?、トカゲでしょうか)が這う意匠はさすがに目を引きます。屋根には牛の頭オブジェがちょこんと乗っています。このカラフルなデザインの服を日本で着たらオシャレですね!
 

一軒のお宅の中を見学させてもらう。案内してくれたのは、写真のうら若き女の子です。梯子状の階段を上り、家屋の中に入ると、広々とした中でモノはほとんど置かれていない。かろうじて囲炉裏や炊事道具、テレビなどが生活感を醸し出す道具です。
 

小学生の女の子たちが村に戻ってきました。皆さんどこの学校に通っているのかを聞きだしたいが、私にそこまでの語学力(この地方特有の訛りがあるインドネシア語)が備わっていない…残念です。みんな、写真に映るポーズが決まっています。
 

2.ドカン

いったんカバンジャヘに戻り向かった先はドカンという村落。こちらはリンガよりもさらに奥に位置する村で、かなり鄙びており、リンガと比べ少々貧しい印象は拭えません。バスで村に降り立つと、不思議な少女がずっと横をついてきてくれました。
 

実は伝統家屋が並ぶ集落は高台にあり、村全体を展望することができる。住宅が密集しているエリアには、木だけで建てられた伝統集落がさほど残っていないですね。
 

ドカンの集落を歩く

状態の良い伝統家屋です。リンガと比べ建物外壁の装飾には乏しいですが、屋根に乗る牛が共通していますね。しかも牛が見下ろす感じの意匠がカワイらしくステキです。屋根の装飾模様はリンガと異なりますが、一見したところ似たデザインの幾何学模様ですね。
 

こちらはメンテナンス状態がやや落ちますが、生活感がよく出ている伝統家屋。家の前ではオバサンたちが井戸端会議をしています。
 

ベモはこちらの雑貨屋and村案内看板の前から出発です。私のような外国人を見て喜ぶのは子供・・・というのはアジア世界共通の現象と言えるでしょう。
 
 
ということで、ブラスタギ近郊にある伝統集落を巡ってみました。相変わらず子供にだけはモテモテだなと自慢にもならない自慢をしますが、こうした土地で頼りになるのが好奇心に目をギラツカせた子供たちなのです。子供サイコ~!ちなみに大人たちは、私のような”異邦人”を遠巻きに見ていることが多く、話しかけようとしたらサッと別の方向に歩き出す人が目立つ。
 
さすが村だぜ、保守的だぜ!
こうした点、トバ湖などの”観光エリア”や、ブラスタギやブキティンギなどの”街”とは雰囲気が大きく異なるので、そこを押えておくとイイかもしれません。


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