マンダレー郊外には特色ある古都がいくつもあるが、その大部分が日帰りで(外国人バックパッカーにとって)簡単に観光ができるステキなデスティネーション。私も(前回記事で紹介した)アマラプラで艶めかしきマヌーティア像と象や牛車が多数登場したパレードに遭遇し興奮!これに味をしめ、当初は関心がなかったマンダレー郊外の古都を精力的に巡ることにしました。
 
さっそくガイドブックを開きオモシロそうな街をピックアップすると、ミングォンという巨大遺跡をメインとした観光スポットに目がとまる。何と言ってもマンダレー市内から船でなければ一般的にはアクセスできないという点が妙にそそられます。正直に言うと、ガイドブックに載っていたミングォン・パヤーなどの巨大な建造物にはほとんど興味がなかった。しかし、地理の教科書に掲載されていたエーヤワディー川(私の学んだ頃はイラワジ川)を優雅(?)にクルーズできる上に、往復の乗船代金はK5000(約400円)程度と安い!やはりねぇ、バックパッカーにとっては、このコスパこそが重要なのです。
 

エーヤワディー川の船旅は往復400円の激安クルーズ

ミングォン行き船が出港するマンダレー市内の埠頭は、私が泊まっていたホテルから2~3kmほど離れており、借りていた自転車で向かうことにします。

朝のマンダレー(マヤンチャン)埠頭の様子

道に迷うことはなく楽にマヤンチャン埠頭に到着したが、え、この埠頭から本当にクルーズ船が出港するのと不安になりました。見渡す限りどの船も生活物資を運搬する(ボロ)船のようで、サンパン船やどう見ても水上生活者だろうという船が大多数を占める。本来は胸がワクワクする光景ですが、今回は外国人が大多数を占めるはずの観光船に乗船する予定だが、そんな船はどこにも見あたらないよ~。
 

辺りにはスラムも広がる。まぁこうした光景は途上国の埠頭では一般的ですが…荷役などを担う港湾労働者が置かれている状況を映しだす光景ですね。私が思うに、AIと代替可能な頭脳労働(その際たるものが金融や法務関係)がいまだに高報酬かつ社会的ステイタスも上とあればプッと笑い出したくなる。私にはとても無理な、体力やスキルを必要とする上にロボットでは担えない肉体労働こそ、もっと尊敬を集めるべきだと思います。
 
いや~来る場所を間違えたかなぁなど不安が高まった頃、タクシーが停まる一角を発見。西洋人がたむろする建物で乗船チケットを無事に購入したのでした。
 

外国人専用のクルーズ(?)船でエーヤワディー川を進みます

外国人ばかりを乗せたミングォン観光船は無事に出発。港を出るとすぐに広大なエーヤワディー川の流れに任せるかのように船は進む。いや~これだけ川幅があると、さすがに橋を架けるのは難しそうですね。
 

あまりにも広大な川の光景・・・けっこう退屈になります。まぁ1時間弱といったところか、目指すミングォンの遺跡と思しき巨大建造物が見えてくる。ちなみに写真に映っている建造物、左の白い建物はサットーヤ・パヤー(Settawyar Phaya)、右の赤茶の小高い岩がミングォンの象徴的遺跡ミングォン・パヤー(Mingun Phaya)です。
 
西洋人の中にはけっこうな高齢者や体格が〇〇な方も目立ち、そうした方が下船するのは少々ご苦労な様子。
 

ミングォンの遺跡群を観光する

下船後すぐに気がついたのは、ガイドブックに記載されているような観光スポットがとても狭い範囲にかたまっていること。200mほどの範囲に目指すべき遺跡や寺院があるので、とても簡単に観光ができる場所ですね。
 

たまには集落社会に関する若干の思いを書きます

観光スポットが狭い範囲にある上に外国人観光客が多い、ということは観光経済に伴う大きなマネーにアクセスできる方々も多いのでしょう。港のそばで写真に収まってくれた方々は、皆さん小綺麗で余裕がありそうです。
 

ところがですね、観光スポットから数十メートルも離れると小綺麗で余裕がありそうな光景が一変する。まぁ富んでいるとか貧しいとかは、各世帯の収入状況を聞いたわけではないので判りませんが・・・。たむろしている方に声をかけカメラを向けると、あからさまに嫌な顔をされてしまう。そうした場所で無理に人物写真を撮ることは控えます。
 
確かに日本でもありがちだが、例えば著名な神社仏閣の参道沿いの住民というだけで巨額なマネーが落ちるが、参道の裏の住まいになると観光マネーは落ちてこない。それが結果的に所得差となって表われがち。ただね、この所得差があまりに大きいと外見の身なりだけではなく、心の面にも大きな影響を及ぼしてしまう。
 
ミングォンの小さな集落でなぜこうした差が生じるのかを私なりに推察したところ、外国人旅行者の滞在時間に関連があるのではないでしょうか。観光客用クルーズ船は10:00頃ミングォンに到着した後に2時間半ほど滞在しマンダレーに戻ります。この2時間半の間に観光を済ませランチもとる、この短いステイタイムを考えれば観光客の行動範囲は相当に狭いのです。彼らは船着場から200m程度の沿道沿いに点在する観光スポットを見学した後、エリア内にある飲食店や売店に立ち寄るものと仮定すれば、すぐ間近にあっても観光スポットから外れた場所に足を運ぶ余裕はないのでしょう。
 
う~ん、船着場と観光スポットの位置関係だけで経済的な関係性が決まるのなら、もともと同じ共同体として集落を成立させてきた住民同士の間で齟齬(優劣の意識)が生じてしまうのは致し方がありません。こうした問題を解決するためには、いまや隣接しながらも離ればなれになった集落で、再び互いに共同体意識を持ち広げることによって共助の精神が醸成されれば良いと思います。まあ、言うのは簡単ですが・・・。
 
とまあ、集落の中をうろついていた方がオモシロそうですが、せっかくミングォンという著名な観光地に来たからには、私も他の観光客と同様に短時間で観光スポットを巡ることにします。
 

シンビューメェ(Hwinbyume Phaya)

この白亜の巨大な仏塔は、スメルー山(須弥山)の山頂に建つといわれるスラーマニ・パヤーを模して建てられたもの。時の王バーヂード王が、他界した夫人シンビューメェを偲んで建てさせたものと言われています。まさに”愛の寺院”と呼んでふさわしい美しい寺院ですね。
 

ミングォンの鐘

下船後すぐにある観光スポット。この建物の中には・・・
 

巨大な鐘がありました。口の外径が約5m、重量は90tあり、ヒビの入っていない鐘としては世界最大級とのこと。ただねぇ鐘はしょせん鐘、個人的には興味が持てません。
 

ミングォン・パヤー(Mingun Phaya)

船の中から見えた大きな岩こそミングォン観光のメインスポット。19世紀に世界最大の仏塔をつくろうとした跡で、もし完成していれば高さ150mの仏塔ができていたとのこと。つまり、この岩が実は仏塔の基盤なのだ…驚き!この土台部分を頂上まで登ってみる。
 

すると、それなりにスバラシイ眺望を堪能できます。ここまで来ることを考えたら、ヒールやサンダルではなくスニーカーを履いてください。
 

ミングォン・パヤーの向かいには、仏塔を守る形でライオン像が建立されたのですが、いまや崩れてしまい何の像かよく判らない姿を晒しています。ただ、この巨大さはやはり目を見張るもので、船上から見ても目立ちます(2枚目の写真、左側)。
 
 
以上、ミングォンの観光スポットを簡単に紹介しましたが、現在でも私の記憶に残るのは、あの一見貧しそうな集落の姿。カメラを向けた際に恥ずかしがるのは多くの人に共通の姿かもしれないが、あからさまに嫌がるのは信仰上の問題(例えば写真に撮られると魂が抜けてしまうと信じる方は意外に多い)やモラルの問題(!)などであれば私も納得なのですが・・・。


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