マンダレー市内に何日か滞在し郊外も含め多くの観光スポットを巡ってきたが、この街で最大の聖地であり観光スポットをいまだに訪れていないことに気がつく。実はそれがマンダレーヒルなのだが、ミャンマー旅行中どの街にもある仏教遺跡や寺院ばかりを巡り、正直言って飽きてきました。しかもマンダレー郊外の街も期待外れの場所(当然このブログでは紹介していません!)が多く、ここも入域料金(金額自体は安いですが)を払ってまで行く価値があるかどうか自信が持てなかったのです。さらに、麓の南参道入口から歩いて登るならば、いくら歩きやすい階段といっても1時間程度は要する行程・・・疲れ切った身には苦行となるかもしれません。
 
なんて不平や不安ばかり書きましたが、結論から言うとマンダレーヒルは行って良かった!さすがにマンダレー一番の観光スポットはダテじゃない。まぁ乗合バスやエレベータを使えば頂上まで難なく行くことができるが、ここは楽な階段道、ぜひとも麓から歩いて登りましょうよ!途中では大きな釈迦像がせっかく進むべき道(人生の道標?)を指し示してくれるのですから、それを見逃してしまっては罰が当たるというもの。
 

南参道入口には巨大な2頭の門番が立ちふさがる

マンダレーヒルは王宮のすぐ北側に広がる小高い丘。自転車を漕いで南側の参道に向かいました。

この南参道入口(チンテーヂーナッカウン)には2頭のライオン像が祀られており、まさしくマンダレーヒルの門番。とにかくこれが巨大なのです。まぁ、入場料を支払おうとしない不届き者はライオンによって懲らしめられる運命が待っている?
 

こうしたライオン(獅子)像は日本の神社でも狛犬の対として伝えられているが、その大部分は尊厳をたたえたと言うよりはカワイらしいネコのようなお顔。しかしマンダレーヒルを護るライオンは、かえって表情が読めない上、鋭く尖った大きな爪を分不相応に持っておりサイコパスな恐ろしさを漂わせています。
 

階段の踊り場ごとに、いかにもご利益がありそうなパヤー(仏塔)を通る

2頭のライオン像をくぐりを2~3分ほど参道の階段を上ると、最初の踊り場にある仏塔に着く。チェードーヤ・パヤーという仏塔で仏足石が祀られているとのこと。まぁ私は信心が足りないオッサン、仏足石に興味はないが・・・

ネコちゃんは大好きなのです。このパヤーの辺りには他にも何匹かネコが住みついているようで・・・ステキな=^_^=スポットとして推奨決定だね。
 

ネコとも遊び飽きたので再び参道を上る。10分も進むと次の”聖地”ピーロンチャンター・パヤーに到着する。先ほどのパヤーより広く、ここで休憩をとる人も多そう。涼しげな眼で私を見つめる仏像に手を合わせます。
 

参道一番の見所(だと思う)ビャーデイペイ・パヤーに至る

ピーロンチャンター・パヤーからは階段がやや急になり、多少息が荒くなる。歩くこと15分ほどで着いた先には、迷えるオッサンバックパッカーの行く末を指示してくれる、ありがたい仏像が待っているのでした。

こちらの門をくぐると・・・
 

私に語りかけてくる大きな仏像(予言を与え給う仏陀)が起立していました。”オッサンよ、よくここまでたどり着いたな、誉めてつかわそう。わしの指し示す方向を進めば、オッサンにとって良き未来が待っているはずじゃ”・・・そんな声が頭に入り込んでくる。
 

隣りに座る仏像(アーナンダ)も加勢します。”そうだそうだ仏陀様の言う通りだ、へへ、ペロリ”。う~ん、ただねぇ私は信心が全くないのですよ。いくら仏像に語りかけられても、それを素直に聞く耳を持っていません。自分の進むべき道は自分で決めるもの、助言は無用なのだ!ということで、「予言を与え給う仏陀」の像とはお別れです。
 

ちなみに、このエリアでは眺望が楽しめるが、マンダレーは大気汚染がやや深刻な街。本来は晴れ渡った天気のはずが、煙が辺り一面を包んでしまい、お世辞にも美しい光景とはいえない状況となっている。
 

ンコンミン・ストゥーパと日本人慰霊碑

仏像のありがたい助言を無視する不届き者の私ですが、さらに参道を上ります。

こちらはンコンミン・ストゥーパ、すなわち”ウズラの仏塔”です。仏陀が釈迦になる前に何種類かの動物を転生したと言われますが、そのうちの1つがウズラとのこと。まぁお釈迦様になる前の動物の状態が、どれほどアリガタイものか私には判りませんが、罰当たりなことは避けたいので手を合わせます。
 

そばには日本人慰霊碑がありました。現在の栄えある日本が成立したのは、先の大戦でのご苦労があったからこそ。日本から遠く離れた異国の地で亡くなったご慰霊に敬礼を捧げます。
 

マンダレーヒルの頂上に到達

楽勝だった登山もいよいよ最終地点に近づいてきた。

頂上の手前で祀られているのはサンダームキとそれを取り巻く鬼の像。仏陀の前でお布施をするものが何もないサンダームキは自分の乳房を切り取り献上したという伝説があり、実はマンダレーヒルはこのサンダームキを中心に祀る聖地なのです。自分の乳房を切り取る女性・・・想像しただけでウゲ~痛・そ・う!しかし、鬼が聖人に転化する伝説は数多あり、こうしたエキセントリックな行為こそがパワーの源泉ともなるのです。日本で言えば、鬼子母神の伝承を想起させる。
 
しかし、サンダームキを取り巻く鬼さんたちが滑稽でカワイイデスネ。しかも彼らは鬼のまま変わらぬ姿で、仏陀に対しどう貢献したか私は知りません。鬼であっても祀られる対象であるのなら、さすがはミャンマー、懐の大きさを感じさせます。そう、鬼であっても祀られてしまえばシメタもの、Luckyと喜んでいそうだなぁ!これまで悪業をつくしてきた鬼をも祀る仏教の大らかさが私は好きですね。浄土真宗の説く「悪人正機説」を初めて教科書で読んだときの衝撃をいまだに覚えています。仏陀の前では、いかなる人も悪人であり、大なる悪も小なる悪も仏陀にとっては関係がありません。でしたら、自分が悪であると自覚する者の方が正しい存在で救済の対象となる。鬼はその姿形からして悪そのものなので、己の悪を自覚した時点で救済されるのですね。う~ん、さすがは仏教だなぁ!
 

頂上に到着です。まぁここに至るまで聖地を上り歩いたので、頂上に特別な感慨はありません。クルマやエレベーターを使って直接この頂上まで来てしまったらと想像すると・・・。やはり麓から自分の足で歩いてくるべきだね。


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