スラエムを拠点にに滞在しプレアヴィヒアを心置きなく散策する旅、前回に引き続き書き連ねます。スラエムの真新しい宿まで私を連れて行ってくれたバイクタクシーのドライバーとは、翌日にプレアヴィヒアのチェックポイントまで往復10ドルで案内してもらう約束をする。この10ドルが相場に照らし妥当かどうかは、当時は情報がまだ乏しいため判断しようがありませんでした。まぁ、スラエムから片道25kmつまり往復50km程度の行程を走行するのだから、決してボッタくり金額ではないはず(シェムリアップのトゥクトゥク”小回りツアー”が最安値で10ドル程度ですね)。
 
ただねぇドライバー氏の提案で驚いたのは、彼がお迎えに来る時間。何と始めは朝7:00に出発しようと言われる。彼いわく、昼近くになると観光客がどこからか(大半はシェムリアップなどからのツアー客ですが)湧き出して、とてもじゃないが「天空」の「秘境」気分は味わえないらしい。ところが、午前中の早い時間なら・・・確かにスラエムに滞在するツーリストの姿はほとんど見かけないから、この遺跡をうろつく人は皆無のはず。さすがに私も朝食の時間をとりたいから、ここは朝7:30で手を打つことにします。
 

プレアヴィヒアへの道(The road to Preah Vihear)

ドライバー氏はかなり律儀な方らしく、朝7:00頃にはすでに外で待っていた。ちなみに、前回の記事で用いた写真を重複使用(朝日に照らされ俄然やる気みなぎるドライバー氏)。

想うにカンボジアのドライバーってけっこう時間などの約束は守る方かも。まぁ朝から仕事を入れて早い時間に終わらせれば、それ以降も仕事を入れて再び稼ごうといった経済的動機かな?ちなみに道中では牛による渋滞はあったが、ほとんどクルマとすれ違うことはなく、1時間程度でチェックポイントに到着。
 

チェックポイントでバイクを乗り換える必要があります

スラエムからはプレアヴィヒア遺跡の麓にあるチェックポイントまで乗りつけた後、別のバイクに乗り換えなければいけません。しかもチェックポイントから遺跡までの往復に別途5ドルを支払う。う~ん、スラエムから遺跡まで直接行ければ、どれだけ楽かと怒りすら感じますが・・・(まぁこれぞ誰かさんの既得権益!)。仮に社会保障の一環として例えば職にあぶれた若者を雇用しているのだとしたら許せる話ですが。

チェックポイントから遺跡までは急峻な山道でヘアピンカーブの連続、振り落とされないか少々恐怖。
 

遺跡入口の駐車場に到着。下に掘っ立て小屋が見えるが、おそらくここにはタイとの国境を守る警備兵が詰めているのでしょうか。石の土手道の先には、遺跡の入口を示すカンボジア国旗がはためくのが見えます。
 

プレアヴィヒア遺跡を探索する

カンボジア国旗に加えユネスコの紋章旗なども加えた掲揚台を過ぎると、いよいよプレアヴィヒアの参拝道。これから5つの塔門をくぐり、天空の断崖まで向かう。まずはナーガ(蛇神)の欄干を歩きます。
 

第一塔門はカンボジア紙幣(2000R札)の図柄でお馴染みの姿

ナーガの欄干の先、国旗掲揚台からは歩きで5分ほどの場所にまず最初の見どころ第一塔門に到達。こちらはカンボジアの2000R札紙幣の図柄にも使われる門だが、再建途上の足場が組まれており少々見苦しかったです。よってここは華麗にスルー。
 

第一塔門から第二塔門まではかなり長い参道(徒歩6~7分ほど)を進む。確かに朝早い時間に来た効果か、観光客が誰もいません。う~ん、実は少し寂しく感じてしまう(治安上の問題は全くありません)!
 

第二塔門といえば乳海撹拌のレリーフは見逃せない

長い参道の先には第二塔門に至る階段、ここまで来ればそこそこ疲れてくる。地元の子供がスマシタ視線を向けるが、何かモノをねだるわけではなく、ただ単に観光客を見物している様子。この日最初の客は、まぁ私でしょう。
 

この大きな塔門は状態の良いレリーフがかなり残されており、子細に見学をすればかなりの時間を費やしそう。個人的には、カーラ&マカラのモチーフが好きだが、カンボジアのクメール遺跡ならどこにでもあるモチーフなので紹介は差し控えます。
 

さて、ここで見逃せないレリーフと言えば、塔門背後(第三塔門側)にある「乳海撹拌」のレリーフでしょう。私、ヒンドゥー神話の真骨頂、この乳海撹拌のエピソードが大好きでして!
 
ヒンドゥの天地創造神話、乳海撹拌。神々は竜王(ヴァースキ)の頭と尾を互いに綱引きのように引っ張ることで、竜王のいる海から太陽や月を含む様々な事物を誕生させるというお話を1枚で表したレリーフ。う~んヴァースキさん、思いっきり引っ張られあまりにも痛々しくて・・・涙がちょちょぎれてくる。皆が一所懸命になっている下で、蓮華と一体化しグウタラ横たわり寝るヴィシュヌ神・・・滑稽で笑えてきます。
 

第三塔門~第五塔門:中央祠堂を見る、ここまで来ればあとは同じ?

こちらは第三塔門、美しいレリーフが残されており、研究者ならずとも興味が惹かれる。
 

第三塔門から第五塔門までは、ほぼ1つの繋がったエリアとなっているため一気に紹介、私の記事ではかなり頻出するライオン(シンハ)像が雄叫びをあげるが、どこか憂いを帯びる。きっとパートナーが見当たらず一匹でいるのが寂しいのでしょうか。
 

中央祠堂を守る兵士の姿が見えるが、観光客の姿は私だけ・・・そりゃダラケテいても文句を言う人はいません。
 

いよいよ天空の遺跡たる断崖とご対面

中央祠堂のすぐ先にはもう誰も進めません。ここに断崖があり、SNS映え界隈で話題(?)の天空の光景が待っているのです。
 

どうですか・・・私にとっては少々期待外れの光景かな。モヤが出てしまい地平線が見えず視界が狭い。SNSによくあるような、断崖絶壁の下、地平線いっぱいまで広がる緑の光景は残念ながら見ることはできなかったが、私としては十分満足しました。なにせ、あのカワイらしい乳海撹拌のレリーフを誰もいない中、心置きなく堪能できたのだから・・・
 
再び駐車場に戻るまで祠堂のレリーフを子細に見学するうち、いつしか周囲には観光客が取り巻く状況と変貌!


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