先日は自力村をただううろついただけで十二分に堪能した私。ただ、同行の妻は田園風景にポツポツと現れる廃墟ビルディング(望楼)に恐れをなした様子、なにせ文革時に書かれたおどろおどろしいスローガンを丹念に読みこんではヒエーッと顔をのけぞる。う~ん、男と女じゃ感性が違うんだよね(スイマセン、こうした単純な一般化や二元論をお許しください。以下同じ)。私など、文革の勇ましいスローガンを見つけるたび歓喜の雄叫びをあげ、廃墟のような奇形ビルの中をRPG気分で探検する、そんな私を横目に見る妻。大概は望楼の玄関先で退屈そうに座る管理人の老人と慣れない北京語で話し込み、私だけに上へ登れと言う。まぁ迷宮の探索などというのは、確かに一人の方が気分が盛り上がり好都合なのですが……。
 

例えば開平のホテルで夜見たテレビドラマのヒトコマ、私はつい大笑いをしてしまい思わず写真を撮ってしまった。清時代の中国、とある食堂で木製ロボット(のツモリ)の店員が惹き起こすドタバタ劇……っていかにもチープな作品です。セットも木人ロボットもあまりに粗末だし、ストーリーもヒドイ。ただねぇ、こうしたB級作品を楽しむ私に対し妻は呆れ顔、いかにもサゲずむ目で私を見る。いや~感性が違うぜ!
 
おそらく自力村のあの光景や、これから紹介する馬降龍を楽しむ(男性的な)感性というものは、昨今ハヤリの工業地帯や廃墟建造物の見学、B級作品の鑑賞と相通ずるものでしょうか。人がつくり出した巨大な造形物に対する畏怖と同時に、おどろおどろしい廃墟に潜むモノノケに対する単純な好奇心、奇妙キテレツでひょっとしたらB級でしかない建造物に対するシニカルな可笑しみ・・・最高ダヨォ!
 

廃墟ビルに興味を持たない妻も楽しめた「赤坎」の街並み

異形の望楼を楽しむ発想が妻にない以上、夫婦で楽しめるスポットを見つけなければ二人旅の意味がない。開平市街地から市内バスに乗り赤坎に向かいました。
 
この赤坎は騎楼古街と呼ばれるアーケードが続く建物群が特徴的、まぁ東南アジア(マレーシア、シンガポールなど)や台湾を巡った方ならお馴染みの街並みかなと思う。水運に恵まれた赤坎は、17世紀には埠頭が築かれ華僑が海外へ出発する拠点として栄えたとのこと。
 

川沿いには屋台も出て観光客の姿もポツポツとあるが、裏道に入ると一転、人影もなく雰囲気はゴーストタウンそのもの。いや~俄然やる気がでてくるぜ!ここからは一人で探索を開始、妻は古臭い喫茶室で小吃(スナック)を食べながら休んでもらいます。
 

といっても小さな街を20分も探索すれば、もう見るものがなくなる。妻のもとに戻り赤坎イチの見どころに向かう。
 

それがこの赤坎影視城、映画ロケで使われた建造物群をそのまま”映画村”として公開している場所です。まぁ映画のセットとして整備された街並みは、私にとっては興味の範疇外。今度は妻が興味津々に見てまわる一方、僕はおそらく映画で使われた、いかにも趣のあるカフェで一休みといきたいところだが、閉まっていました!
 

「馬降龍」の街並みを駿盧から眺めれば、サイコォ~!

赤坎からはバイクタクシーに乗車し、馬降龍を目指します。馬降龍は永安里から龍江里に至る5つの集落で構成されており、この全てを歩くのは結構シンドイかも(私たちは永安里でバイクを降りて散々歩いたが……バイクに乗ればどれだけ楽か;´д`トホホ)

永安里のシンボルと言える碉楼「天禄楼」が見えます。この碉楼は29世帯の村民が資金を出し合って建てた衆楼と呼ばれるもの。建物内には29の部屋がつくられ、出資した村民たちに配分されたという……ステキなドラマだなぁ。
 

ただねぇ集落と集落の間はけっこうな密林でして、木々の間に背の高い望楼が見え隠れする。バイタクのお兄さんは永安里の見学を終えたら次の集落に送っていくと言うが、それを断った私。妻の冷たい視線が投げかけられます。
 

慶臨里に辿り着きました。この集落ではぜひとも駿盧に入場することをおススメ、(私が独断で選ぶ)馬降龍で最高の見どころのはず。建物内は立園のような豪華さは全くなく、当時の一般居民たちの質素な暮らしぶりがうかがえます。
 

最上階のバルコニーまで上ると絶景が待ち受けていた!すぐ足元には横一列に並ぶ慶臨里の集落が広がり、その向こうには木々が生い茂る。木々の向こうには・・・そう、僕は開平のこんな景色も見たかったんだよ!ちなみに1枚目の写真を解説すると、向かって右手前の碉楼は昌盧、左奥は耀盧でしょうか。この景色が見られたのなら、ここまで歩いた甲斐があったというもの。
 
とりあえず馬降龍を端から端まで歩いたが、とにかくヘトヘトに疲れてしまい、この先の目的地(蜆岡)に行こうという気力はもはや残されていない。実は、赤坎から馬降龍まで運んでもらったバイタクのドライバーは馬降龍や蜆岡を巡ることを提案していたが、締まり屋(ただのケチ!)の私はそれを断り片道だけ乗せてもらった。だってさぁ、バイクをチャーターしないで1回10~20元程度で乗り継ぎ、タイミングが合えば公営バスに乗ってしまった方がよほど安いでしょ。つまり、赤坎~馬降龍~蜆岡と巡り開平に戻るまで、1人100元以内に当然収まると考えていました。ところが、この疲労までは計算に入れていなかった。
 
馬降龍5つ目の集落、龍江里では先ほど乗ったバイタクおっちゃんが私たちのことを待ち構えていた。もう疲れてしまい蜆岡まで行く気はないことを伝えると、おっちゃんは彼の提案を受けなかった私たちをあたかも見下す態度となる。そして勝ち誇った顔つきで「近くのバスターミナルまで送るから乗れ」とアゴでフンと促したのでした(無料!)。


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